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bluegrasswise ブログ

日本列島とほぼ同じ緯度にあるアパラチア山脈、どことなくその人情も日本人に通じる 南部アパラチアの田舎から生まれたオーガニックでエコなアコースティック音楽(共鳴 /共生)、そして1960年代以降のヒッピー文化を含むカウンターカルチャーとの出会い で自由な個々人の感性を尊重する非マウス音楽として人知れず世代を越えて広まりつつあるブルーグラス(bluegrass)にかかわる(wise)ブログです。

ブルーグラスの誕生から70年、part three

ブルーグラス ブルーグラスって何?

ブルーグラスの誕生から70年、part three:
ブルーグラスはバンドサウンド②

(ムーンシャイナー2015年4月号より)

 

bluegrasswise.hatenablog.com

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ブルーグラス成立でもう一点、現在の視点から重要なのは、ブルーグラス音楽の成立を1939年に置くか、1945年に置くか?という部分に曖昧さが残ることである。ブルーグラスを音楽的に解析すれば1945年、アール・スクラッグスのスリーフィンガーバンジョーの加入がブルーグラススタイル成立の絶対条件であると本誌は断定するのだが、「ブルーグラスの父」であるビル・モンローの言葉を借りれば1939年、アールのスリーフィンガーバンジョーの存在はなく、ジャグやアコーディオンさえも加えたストリングバンドの時代、ビル・モンローがブルーグラスボーイズというバンドを率いて活躍を始めた時点からをブルーグラスと呼ぶのだ。

それはすなわち、楽器編成や奏法にこだわることなく、「ブルーグラス」という言葉が、さまざまな南部白人系のアコースティック音楽全般を含むものと解釈することができるという結果を生む。この解釈が21世紀以降、あの映画『オーブラザー!』(2000年、コーエン兄弟監督)サントラ盤の大ヒットで、米メディアが一斉に「フォークリバイバルの再来」と報じたとき、そのアルバムに収められていたオールドタイムやブルースも含め、南部白人系のアコースティック音楽全般をメディアが「ブルーグラス」と呼び始めたという、千載一遇のチャンス(混乱ととらえる人もいるだろうが)が現在も続いている。

それは、確実にブルーグラスのマーケットを拡げている。コアなファンの楽しみ(まさに本誌が「それ」だが)を除いて、音楽ジャンルを規定して他を排除することには何の意味もない……、というより自傷行為にも等しいということは芸術において当然のことだ。いわんや日本においては、ジョン万次郎が持ち込んだフォスター以来、スコットランド文部省唱歌など南部白人系アコースティック音楽をすべてブルーグラスの範疇に取り込むことさえ可能な歴史的経緯を持っていることを、「我田引水!」と言われようとも、ここで確認しておきたい。なんでもかんでも「ブルーグラッース!」。

【ジャンル名について】

ちなみに音楽ジャンル名は一般に、業界のパワーバランスによってメディアが使用するもので、音楽が産業化する前、南部白人系音楽についてはさまざまな呼称が使われていたようだがラジオ/レコード時代が始まった1920年代には「ヒルビリー」(1900年にニューヨークジャーナル紙で初出した、主にアパラチアの閉鎖社会の教養のない田舎者に対するスコットランド由来の蔑称)と呼ばれ始めている。なお1923年に広義のカントリー音楽最初のヒットレコードと言われるフィドリン・ジョン・カーソンの音楽には初めて「オールドタイム」ミュージックという呼び方で宣伝しており、これがフィドルを中心にしたブルーグラス以前のストリングバンド音楽に現在も使われる「オールドタイム」のはじまりとされる。

そののちミュージシャンやレコード店などから「ヒルビリー」という呼称のステレオタイプな悪いイメージを払しょくするために1944年にビルボード誌がヒルビリーを「フォークソング&ブルース」に変更(なお1949年にはビルボード誌は黒人の「レース」音楽を「リズム&ブルース」と呼ぶようになっている)、さらに1949年には「カントリー」または「カントリー&ウエスタン」に変更している。近年、1980年代以降では中西部や西部発祥のウエスタン・スウィングやカウボーイソングなどをサブジャンルとして「ウエスタン」として認知するようになり、シンプルに「カントリー」という呼称が一般的になっている。ちなみに日本で戦後使われた「ウエスタン」は、折からの西部劇ブームなどとあいまった日本独自の和製ジャンル名である。

カントリーという音楽ジャンルは現在、テイラー・スウィフトからカーターファミリーまで、極めて広範な音楽を包括しており、第一義的には言葉の意味通り「カントリー(田舎、クニ、イナカ)」という語感を持ち、ブルーグラスやロカビリー、オールドタイムやフォークなども広義に「カントリー」という大きな音楽分野のサブジャンルと解釈されている。ただ、歴史を重ねた商業過程のある英米とは違い、日本のように未開拓なメインストリームマーケットにおいては、その呼称の使い方に注意しないと……着たくないラメ入り服や被りたくないハットを強要される場合がある.....hahaha!?